上岡龍太郎のダウンタウン相方論
上「この二人(ダウンタウン)は仲ええの?普段は」
松「僕はねぇ、仲ええと思ってるんですけどね、コイツは多分思ってないですよ」
浜「なんでやねん!」
上「この仕事が仮に終わったら、もうバラバラでしょ」
松「はいはい」
上「たまたま飲みに行った先が一緒って会うことはない?」
松「今まで一回だけありました」
上「一回だけ。ほお」
浜「でも、最初の頃はね、よく一緒に遊びに行ったりしてたんですけどね」
上「できるだけ離れているほうがええよ。漫才師は」
浜「うーん」
上「できるだけ仲悪いほうがいい」
松「一時ねぇ、無茶苦茶腹立つ時期ってあるんですよ!」
上「その時期が、漫才が伸びる時期」
浜「そうなんですか」
上「もう、ホント全人格的に恨むでしょ」
(浜田笑う)
松「後ろからこの後頭部を見てるだけで腹立って、腹立って!」
上「僕もノックさん(横山ノック)に何回思ったかわからへん。本気で叩きたくなって"アー!!"って」
浜「相手が思っている以上に、思われている相手はその倍以上腹立ってる」
上「だから、舞台が面白なる!」
浜「ホンマにひどい時なんて打ち合わせも何もなしで、顔も見んと、目ェも見んと、番組たとえば「4時」なんかでも音楽鳴って」
松「おい待て。俺は「4時」が始まったときは仲ええと思ってたぞ」
(浜田笑う)
浜「知らん顔して出て行ってもできるもんなんですよね」
上「できるできる。うん、そのケンカがいいんです」
松「そうですかねぇ」
上「反発しあって、プラスとマイナスが。仲のええ漫才師で売れた漫才師はおらへんもん」
浜「はあ」
上「はるたかなた(海原はるた・かなた)なんか仲ええよ、二人」
(松本笑う)
浜「知りませんけどねぇ。そうですか」
松「知りませんけどね、僕は」
上「AスケBスケさん(秋田Aスケ・Bスケ)は仲悪かったもん。全く目も合わせへん」
松「"もう、これは仲悪かったなぁ!"っていうのは誰ですか?」
上「AB先生ちゃうかね」
浜「殴り合いとかはそんなんではないでしょう?」
上「そこまでじゃない。相手を商売の道具やと思ってる。"俺は綿菓子を売る職人で、コイツは綿菓子の機械や"と思ってるんね。お互いが。"コレがなかったら俺は生活でけへん"ちゅうのは分かってるから、お互いをそういう意味では認めてるけども、決して、"二人で仲良くやろうな"ってのはなかったね」
(浜田笑う)
上「"一人でできるもんなら、一人でやりたい!"」
松「そりゃそうでしょうねぇ」
上「"何もないところから綿菓子は出ないから、仕方なしにこの機械を"」
浜「"しゃあなしにコレ使うとんねや"みたいな」
上「でしょうね。僕なんかもノックさんにそう思うたこと何回もあるね。そりゃ向こうもそう思うてたでしょう。でも、お互いになかったらいかん部分があるんで、お互い受入れようかなぁと」
松「面白いですねぇ」
上「漫才師ちゅうのはねぇ。ホンマ一般の人にはわかってもらえないだろうけど、夫婦でもないよな」
浜「そうですね」
松「兄弟に近いんですよね」
上「ああ、そうかなぁ。兄弟かなぁ。うーん、僕は男の兄弟がおらんかったからわからんけど、そうかもしれないね。親友ではないね」
浜「逆に、仕事終わってね、兄弟で飯を食いにくことはしないですから」
上「だから、お互い違う情報をお互いの私生活で掴んどいて、お互いの感性のなかがポンとぶつかったときにひとつのもんとなって跳ね返るから、漫才は面白いもので。同じところに二人で行ってたらね、感じとることもだいたい一緒になってしまう。見たり聞いたりするのが。こっちがロック聞きに行ったのに、こっちが演歌聞きに行ってたとか。こっちがソシアンダンスやって、こっちがディスコやったとか、そこでぶつかり合うっていうね」
松「僕なんか意識して逆を行ってしまいますからね。コイツが野球しだしたら、ドンドン嫌いなっていくし、演歌歌い出したら嫌になっていくし」
上「そういうところがね、この松本くんのクソ生意気さね。これが僕と似ているから、好きや」
浜「あー」
上「ところが子どものおもちゃになってもうたからなぁ。二丁目劇場で」
松「ちょっとね~」
上「ちょっとねぇ。何やっても笑うジャリンコの前でね」
***解説***
1989年放送。
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