ダウンタウンを最初に評価した作家
浜「次はですね、(心斎橋筋)二丁目劇場の客席のほうへ、香川登枝緒先生がお越しでございますんで」
(香川拍手)
浜「先生、前(通ります)すみません。松本はそっち」
松「あーい」
浜「今、タレントとか、そういうのを年代順に追ったんですけれど、実際の話、(関わったのは)香川先生が一番早かったんでしょう?我々は」
松「そうですね」
浜「吉本以外というか、外の人というか」
香「(吉本総合芸能)学院の入学式のときに、お話しに行って」
松「ええ」
浜「だから、一番最初が香川先生」
香「そうですね。この業界での」
浜「そうですね」
松「だって一日目ですもんね」
浜「そうです、そうです。それで「今宮(子供)えびす(マンザイ新人コンクール)」で」
香「だから、NSC学院のときにも知ってたことになるけども、まあ"客席に一人可愛い子がおるなぁ"とは思ってたんやけどね」
(松本笑う)
松「それはどっちですのん?可愛い子って」
香「それは追及せんけど」
(ダウンタウン笑う)
香「で、それから二三ヶ月で、「今宮えびす」で漫才聞かしてもろうて」
浜「そうです、そうです」
香「本当に久しぶりに嬉しかった!なぜならば、一人ひとりが面白いのに、1+1が3になって、面白さが倍化されるというね。それまで、はっきり言うて、1+1が0.8にしかならんやつがようけおったからね」
松「ほお」
香「だから、浜ちゃんと松ちゃんは縁があったようにええ人材やと思うたから、あれ(コンクール)は十回ぐらいやってると思うけど、俺が審査員長で握手を求めたのは、あんたらだけです。それほど嬉しかった」
浜「そう言うていただけると」
香「例にあげたと思いますけれど、昭和十六、十七年に、今のいとしこいし(夢路いとし・喜味こいし)さんがね、芳博・芳坊(戦前の旧コンビ名)の、ちょうどそんな感じでね。バラバラにしても面白い、合わせても面白いと。だから、今後あんたらがいつまで漫才をやり続けるか、コントをやるかわからんけども、二人合わしたらより面白くなるいうことを根本でね、どっちも思うててほしいと思いますね」
浜「本当に香川先生には色々助言もいただいて」
香「谷川さん(不明)にも"ギャラ上げたってや!"と言うた覚えもあるしね」
(浜田笑う)
松「そうですか。そのとき富井さん(富井善晴/NSC開校責任者)はなんて言うてました?」
香「"考えとく"言うて」
松「ああ、全然考えてませんよね」
(浜田笑う)
香「富井さん、考えて。大崎さんも(大崎洋/当時NSC担当社員、現吉本興業社長)」
松「そうですよね」
香「それで、さっきもお話に出てたけど、ここで「(心斎橋筋)二丁目物語」(劇場オープニングショー)ね」
浜「はいはい」
香「ホンマに悪いけど、薄いお客さんを前にしてね。もう一生懸命、湊裕美子(演出家)にいじめられね、よう耐えてやっとったから、もうボチボチこの辺でね」
松「そうですね」
香「芸人はギャラのためにやるんじゃないけども、ギャラが上がると"ああ、認められてんねんな"ってことが自分で分かりますからね」
(ダウンタウン頷く)
香「張り合いが出るでしょ」
松・浜「そうですね」
香「だから、今後とも上手いこと言いなおってね。"生意気やぁ!"って言われる千円手前ぐらいにしてね」
(松本笑う)
香「私は、えらい寂しいこと言うけど、これから何十年も生きひんかもわからんけどもな」
松・浜「いえいえ」
香「少なくとも、"ああ、今年もダウンタウン大きなった。来年もダウンタウン大きなった。ああ、昔のことを思ったら、十倍ぐらい大きなタレントになった"とね、思わしてください」
松・浜「はい」
香「ホンマ。いわば孫みたいなつもりでおんねんからね」
松「そうですね」
香「生意気なこと言うようだけど」
浜「いえいえ、そんな」
松「でも、もし僕らが、例えば来年の今ごろ天下とってたら、もう先生は"ああ、よかった~"と思ってポクッと逝ってまうなんて、そんなことはないですよね」
香「うーん。もうちょっと待ってな」
(浜田笑う)
浜「お前もいらんこと言うな!」
松「それはせわしないですもんね」
浜「だから、よく香川先生なんか楽屋きてね、"テレホンカード貰うたから、コレ松ちゃんにも渡しといて"とか、よく貰うたりしてるんですよ。ホントすいません」
香「自分にそういう身寄りがないもんですからね。吉本の若い人が皆、子どもや孫や弟や恋人や、そんな気持ちがするからね。生きてる限りはアドバイスを続けますんで」
浜「今後とも、よろしくお願いします」
松「よろしくお願いします」
***解説***
「4時ですよーだ」より
1989年放送。
NSCの入学式で喜劇作家の香川と対面した後、「今宮子供えびすマンザイ新人コンクール」にて、結成三ヶ月ながら福笑い大賞(最高賞)を獲得する。
その時の審査員長として二人の漫才を評価したのは他でもない香川だった。
トーク当時、香川は六十五歳、松本・浜田は二十六歳であり、この約四〇年という年齢差から香川がダウンタウンを孫と表すのも頷けるだろう。
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