松ちゃん、M-1辞退の裏に

松本人志高須光聖のトーク。

 

松「「M-1(グランプリ)」の審査員を今回、辞退させて頂くことに決定致しまして」

高「いーやー!これはあのメンバーというかこのスタッフ」

松「そうやねん。“テンション下がるわぁ”みたいな話もチラホラ聞くんですけど」

高「テンション下がるでしょ」

松「いや、これはもうしょうがないんですよ。理由はもうはっきりしているんで」

高「じゅあ、理由を一つお願いします。パシッとお願いします」

松「なんか「ジャンクSPORTS」が真裏にあるらしいね」

高「そうなんです。スペシャル(特番)でね」

松「で、やっぱりそれは相方の裏でやるわけにはいかんやん?」

高「なるほど」

松「って、建前上そういう風に言うてるんやけど、ホンマはいい機会やなと思って」

(松本笑う)

松「いや、違う!ほいで!そいでも、紳助兄やんがおったら、俺はサブ的な出方なんで、それはもうええかと思ってたんだけど、今回はねぇ、こういうことですから、下手したら俺が全面に押し出る形になるでしょ?コンビ同士でやねぇ、なんぼ仲悪いかしらんけどもねぇ、表裏でやなぁ、出ているわけにもいかんやんか」

高「それはそうです」

松「なんぼクソくらえみたいな、アンチみたいなことやってたとしても」

高「……いや俺も、なんか言わなアカンと思うんねんけど、別に大義はないけど、すぐ言われへんかった!いろんなことを」

(松本笑う)

高「いやいや、仲良いですよ。仲は良いんですよ」

松「いやホントに。それはやっぱできへんやんか」

高「そりゃそうやんね」

松「ねぇ。だから」

高「そうですか。でも、それはスタッフからしたら、二枚看板とは言いませんが、紳助さんの後ろに松本がおって、後ろ手があったからいいように見えたけども、"コレ、松ちゃんまでもいなかったらどうすんの"って」

松「いや、毎年審査員はホンマ困ってて。そうでなくても去年でも十分困っているわけよ。いろんな人にあたって皆さん嫌がるのよ、真剣に。その、お笑いを評価するってことをね」

高「なんかね、同じ業種の人が評価するっていうはやっぱ嫌でしょうね」

松「うーん、いろいろ考えることはあるみたいで。だから、しゃくれ二人がいないわけで」

高「なるほど。受け口二人が」

(高須笑う)

松「そうなんですよ」

高「絶妙な受け口二人が」

松「そう、絶妙な受け口二人がいないんで。でも、浜田は辞めるわけにもいかんやんか」

高「いや無理でしょ。だってそりゃ「ジャンク」はレギュラー(メインMC)なんですから」

松「俺はもっとゆるい感じやから」

高「年に一回、別にレギュラーじゃないですからね」

松「別に俺がどうしても出なアカンって規定はないわけですから。まあまあ、じゃあここは俺が一歩引いとこかみたいな」

高「いやいや、"まあまあ一歩引いとこか"じゃなくて、"まあまあ一歩踏み出そか"でええやんか」

松「いや、それはアカンやんか。やっぱりな。他人のコンビを見る前に、おのれのコンビを見ろって話になってきませんか?」

高「あ、なるほどね」

松「どうですか?"あなた、息が合ってるね"とか」

高「あんだけ毒舌なのに、相方に対して」

松「"君たち、息が合ってるよ"と言っている人間が、相方と真裏でやってて、これで俺が!辻褄が!」

高「ええのンでたなぁ!」

松「辻褄がなんやったっけ」

高「そこはパシッと言うてや」

(松本笑う)

高「"おうた"でええやん、そこで」

松「辻褄が合えへんやんか」

高「まあねぇ」

松「そうでしょ」

 

 

***解説***

松本人志の放送室」より

 

2004年放送。

島田紳助が企画した漫才コンテスト「M-1グランプリ」は、この年で第4回目を迎えていた。

高須の言葉にあるように、例年の審査員の二枚看板は紳助と松本だった。

しかし、同年10月に紳助が傷害事件を起こし、約2ヶ月間謹慎することになったため、その期間中に開催が予定されていた当番組の参加は不可能だった。

これが松本の言う「今回はねぇ、こういうことですから」の詳細である。

また、「真裏」とはテレビ業界でいう同時間帯に放送される他局の裏番組のことを指し、この時期はたまたま松本と浜田の個々の番組が「真裏」でかぶってしまった。

いわゆる"裏かぶり"とは、同時間帯に"同一人物"が他局にかぶって出演することを言い、スポンサー企業への配慮からテレビ各局はなるべく避けるよう注意を払うものの、ダウンタウンの場合は"同一人物"ではなく"コンビ"なので、仮に松本が「M-1」に出演したところでタブー視される"裏かぶり"には該当しない。

しかし、松本や浜田がたまに発する「2人でダウンタウン、どうぞよろしく」という言葉の通り、2人でひとつと考えると、相方との"裏かぶり"は避けたいものなのかもしれない。